最所にこの言葉を読んだ時、少し違和感を感じた。奴隷制や戦争を反対したり、ソローは世の中を良くしたいと行動していた気がしていたからだ。しかし、ウォールデン湖のほとりに小屋を建てて暮らしたのは、自分に本当に必要なものを見極めるためだったことを考えれば、納得がいく。ソローが奴隷制に強く反対し、南部から逃げて来た奴隷をかくまって助けたり、メキシコに戦争をしかけた政府に反対して税金を収めなかったりしたのは、社会をよくしようとしてではなく、自分が自分らしく生きるために必要だったからなのだ。 ソローにとっては、湖のほとりで瞑想をすることも、釣りをすることも、ハックルベリーを摘むことも、奴隷を助けることも、本を書くことも、散歩をすることも、すべて同じように自分に大切なことだった。自分が正しいと思う方向に人や社会を変えようとつま先立つことなく、いつでも両足をしっかり大地につけて自分の信念に誠実に生きた。 ソローの師であり親友でもあったエマソンも、そしてソロー自身も、人間の本質を神につながる限りなく良いものと信じていた。上に紹介したソローの言葉はいっけん利己的な印象を与えるが、決してそうではない。人間が本当の意味で自分を大切に生きた時、その延長線上にある社会は自然に良くなると確信していたからこその言葉だと思う。 とことん自分らしく生きたソローは、今なお世界中に大きなインピレーションを与え続けている。 More #
by kayangarden
| 2023-10-07 23:00
自分自身の心を信じられれば、自分以外の人のことも、もっと信頼できるようになるでしょう。 ―エマソン
自分が弱っている時、自信が持てない時、つい人を頼りたくなる。なぐさめてほしい、励ましてほしい、支えてほしいと。しかし、たとえ相手が良いアドバイスをしてくれたとしても、それがこちらの望んでいた通りでなければ、かえって大きな不満を抱えることもある。何と面倒な! エマソンが言う「自分を信じる」とは、そんな風に弱ったり怒ったりする、感情に翻弄される自分ではない。そんなアップダウンの激しい自分など信じられるものではない。エマソンは、そうした感情とは別に、神とつながる性質を人間はだれしも持っているのだと信じた。だから、自分の中にあるその宝ものに気づいて認めた時に初めて、自分以外の人も同じように宝ものを宿していることに気づく。それが、他人に対するゆるぎない信頼になるのだろう。
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by kayangarden
| 2023-10-07 00:33
生きて存在していることの尊く気高い目的がかすんで見えなくなると、途端に、人生は滑稽でみじめなものになる。すると人は目の前のものだけに注意を払うようになり、五感に訴えるものしか相手にできなくなる。 ―エマソン Life is comic or pitiful as soon as the high ends of being fade out of sight, and man becomes near-sighted, and can only attend to what addresses the senses. -- R. W. Emerson 朝、外に出ると、北東の空に積乱雲がもくもくと湧き上がっていた。そのてっぺんは見ている内にも成長を続け、青空へ食い込むように上へ上へと昇っていく。 自分の心でありながら、自分の意志で心を動かすことは難しい。心が固く閉まっている時は、身体は石のように重くなる。視線も知らずのうちに目の前のものごとにしか向かなくなる。しかし、身体を動かすことで、自分では思いもしなかった方向に、ふと心が動くことがある。 空は、実にいろいろな仕掛けで私たちの視線を上へと誘ってくれる。空を見上げた瞬間、ぎゅっと閉まっていた心のフタがゆるんで、新鮮な空気がすーっと流れ込む。「生きてる!良かった!」何だかわからないくすぐったい気持ちが積乱雲のように身体の奥底から、静かに、しかし力強く湧き上がる。
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by kayangarden
| 2023-10-01 16:50
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by kayangarden
| 2023-09-07 17:17
松の林で降りしきるみぞれを見ていると、自分の文章がまったくつまらないものに見え、もうこれ以上書くのはやめようと思う。しかし、抗しがたい愛にかきたてられて生まれた言葉、自分では辿ることのできない心から唇への通路を通って生まれた言葉は、雪よりも美しい。芸術家でいることは難儀だ。 ― エマソン 乱暴なほどの暑さが続くこの夏。あえて冬のお話を。 子どもの頃から、雪が無数に舞い降りてくる、ほんのりオレンジがかった灰色の空を見上げることが好きだ。少しの風でいっせいに向きを変えて飛ぶ雪片の様子は、どんなに見ていても飽きない。見ているうちに、自分が空に吸い込まれていくような感覚になる。 圧倒されるような自然を目の前にした時、自分の考えや発する言葉が小手先の薄っぺらなものに感じることがある。表現しても表現しても追いつかない。それでも、その風景に揺さぶられた心を表すのにぴったりな言葉を探り続けている自分がいる。新しさとともに懐かしさにも満ちた言葉が心のどこかに眠っている気がして。 暑さはまだ続いているが、それでも最近、空や風に秋の柔らかさが感じられるようになった。 どうかくれぐれもお身体を大切にしてください。 #
by kayangarden
| 2023-09-06 23:19
|
by a.kuroyanagi
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